あるニュースでは「ミャンマー」と聞いたり、ある本では「ビルマ」と記載される国名。
とてもややこしいですよね。
結論からいうと、ミャンマーとビルマの違いは「ミャンマー」は新しい名称で、「ビルマ」は昔の名称なんです。
でもいまだに昔の名称を使用する人もいますよね。
なぜなんでしょう。
今回は、ミャンマーとビルマの違いについて解説します。
国名変更の背景
国名が「ミャンマー」に変更されたのは、1989年です。
1988年の民主化運動(8888民主化運動)を抑えこんで権力を得た軍事政権によって名称が変更されました。
国名が変更された理由は、国家を表す概念として「ミャンマー」は少数民族も含むため、「ビルマ」より適切であるというものです。
ミャンマーには多くの少数民族が暮らしています。
ビルマというのは、ミャンマーに暮らす民族グループの一つで、ミャンマーには他にもカチン族やカレン族、シャン族など多くの民族が居住しています。
「ビルマ」はこれら少数民族を含まない概念である一方、「ミャンマー」は少数民族も含むため、国名が変更されたのでした。
ちなみに、1989年から2010年までの正式名称は「ミャンマー連邦」でしたが、2010年に行われた総選挙に伴って発足した新政府の樹立と同時に、現在の正式名称は「ミャンマー連邦共和国」となっています。
なぜ今でもビルマを使用する人がいるのか
なぜ今でも「ビルマ」を使用し続ける人がいるのかという点で、まだ疑問が残ります。
結論からいうと、「ビルマ」を使い続ける人は、国軍による国名変更を認めないという立場から今でも「ビルマ」を使用し続けています。
ここからは、歴史を振り返りつつ、国名変更の問題点を整理していきます。
ミャンマーとビルマの違い
昔からミャンマーには国家を表す言葉として、「ミャンマー」と「ビルマ」の双方が存在していました。
「ミャンマー」は書き言葉(文語)、「ビルマ」は話し言葉(口語)として使い分けられていたのです。
ここで着目しておきたいのが、意味の違いです。
昔から、「ミャンマー」も「ビルマ」も意味に違いはなく、ビルマ族が居住する地域を指す言葉として使用されてきました。
上の段落では、「ミャンマー」は少数民族を含めたもの、「ビルマ」は少数民族を含めないものとして紹介しましたが、こうした意味の違いは、実は軍事政権によって新しく作り出された解釈なのです。
どうして新たな解釈が作り出されたのでしょう。
これには8888民主化運動と関わりがあります。
深刻な経済危機から政府に対する信頼が低下し、民主化運動が展開されるに至りました。
こうした民主化運動を抑えこんで登場した軍事政権は、権力の中央集権制をさらに強化。
戦後は、少数民族の独立運動が長らくつづき、バラバラになった国家を再統合を進める一つの施策として、国名が変更されたのです。
こうした取り組みによって、ミャンマーのビルマ化はどんどん加速しました。
さらに、「ミャンマー」や「ビルマ」はビルマ族が居住する地域を指す言葉というのは、王朝時代で通俗となっていたものでした。
しかしながら、歴史的には、建国の父アウンサン将軍らによって設立されたタキン党が、「ミャンマー」も「ビルマ」も少数民族を包括する名称であるという新たな解釈を与えています。
軍事政権は歴史的な経緯を無視して、「ミャンマー」と「ビルマ」に新たな意味上の違いを作り出したのです。
「ミャンマー」の使用に反対する人
こうした問題点と歴史的な背景から、軍事政権に反対する立場からは「ミャンマー」ではなく、「ビルマ」が使用されてきました。
例えば、ミャンマーの国家最高顧問であるアウンサンスーチーやU.Sや欧米諸国、人権擁護派のメディアなどは、今でも「ビルマ」を使用しています。
ちなみに日本は、軍事政権による「ミャンマー」という国名の変更を当初から受け入れています。
現地に住む人の反応
ミャンマー人の友人に、こうした論争について尋ねてみました。
友人によると、「ミャンマー」を使用することに違和感はなく、今も「ミャンマー」を使用しているとのことでした。
今では「ミャンマー」は、広く国民に浸透してるようです。
本ブログでは
最後に、国名に関する本ブログの立場を明らかにしておきたいと思います。
本ブログでは、国名を表す言葉として「ミャンマー」を使用します。
現在では、「ミャンマー」が広く受け入れられ、「ビルマ」というより「ミャンマー」が日常的に使用されることが多くなりました。
政治的な観点ではなく、一般的に使用されているという観点から「ミャンマー」と表記することとします。
学術的には正しくないかもしれませんが、トピックによっては、「ビルマ」と表記することもあります。
例えば民族グループを示す際には、「ビルマ族」を使用します。
これも、民族グループを示す際には、「ビルマ族」と表記されることが一般的だからです。
どちらが一般的に使用されているかという観点から「ミャンマー」と「ビルマ」を使い分けます。
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